産後の首、肩、背中、頭痛、そして手のしびれ

産後の首、肩、背中、頭痛、そして手のしびれ

産後の頚肩腕症候群と胸郭出口症候群は厄介な問題です。今回は、産後の頭痛、首コリ、肩こり、上背部痛、そして手がしびれる胸郭出口症候群に対して、どのように向き合うべきかを説明したいと思います。

 

1.体型・姿勢・動作

妊娠から出産、産後の育児の時期に体の変化は避けられません。
・体重の増加
・体型の変化
・立位姿勢の変化
・抱っこや授乳による長時間同じ姿勢の維持
などなど、首や肩に負担をかける要因が多くなります。

 

2.赤ちゃんの体重の増加と体型の変化

赤ちゃんの成長とともに、体重の増加と体型の変化が起こります。これにより、だっこ姿勢にも変化が見られ、背中と肩の筋肉に余計なストレスがかかります。

赤ちゃんを抱っこすることで、肩と背中に追加の重量がかかります。特に抱っこ紐の肩ベルトは必ず肩甲骨を下に押し下げるように作用するので、首の筋肉にも負担がかかります。

授乳とベビーケアの際に長時間同じ姿勢を保つことは、首と肩の筋肉に緊張と痛みを引き起こす可能性があります。


3.頚肩腕症候群の症状

産後の頚肩腕症候群を敢えて分類すれば、頭痛、首コリ、肩こり、上背部痛、そして手がしびれる胸郭出口症候群などに分けられます。

痛みの部位は様々でも、その発痛源は神経、血管、滑液包、筋・筋膜(ファシア)などに集約されます。肩こり、一つとっても僧帽筋や棘上筋に加えて、副神経、内上角滑液包、肩甲上動・静脈、肩甲背動・静脈などの癒着が複雑に絡み合っています。

これらの発痛源を一つずつ解きほぐして、鮮明に理解できるように探索すると、症状の本質を理解できるようになります。 .

 

4.胸郭出口症候群の原因

胸郭出口症候群は上肢への血管や神経の絞扼によって起こると理解されています。しかし、絞扼のみで起こるわけではなく、緊張、走行の変化、圧迫の組み合わせでおこります。

また頸椎、肩甲骨、鎖骨、上位胸郭の位置関係(すなわちアライメント)によっても変化します。

手がしびれている場合、しびれを誘発する部位を見極め、そのうえでその部分へのストレスを上位頸椎から手までのすべての要因を分析しつつ、解決に必要なロードマップを考えていくことになります。

例えば、頸椎のマルアライメントで外頸静脈や総頚動脈が緊張し、それが腕頭静脈や鎖骨下動脈、そして腕神経叢を引き上げると、肋鎖間を通る腕神経叢の走行に変化が生じます。また、烏口突起の裏側に腕神経叢が上がって、そこで癒着すると、腕神経叢は骨頭の前を通ることになり遠回りします。腕神経叢を構成する血管や神経の走行の変化を見極め、最短距離に戻すことで腕神経叢へのストレスは大きく軽減できるのです。

 

5.姿勢・動作・アライメント

対症療法で発痛源の治療が完了して痛みが消失しても、姿勢や動作に問題があると症状が再燃することがしばしば経験されます。やはり、姿勢や動作に問題があると、発痛源へのストレスが繰り返されるため、再燃しやすいことは容易に理解されると思います。

姿勢の改善は簡単ではありません。着目点をリストアップすると、

  • 腹部の過緊張:内臓も含めた腹部の緊張が胸骨を下方に引く。
  • 胸郭の変形(リブフレア)と拘縮:妊娠中の子宮の拡張によって、中位胸郭が押し出された状態。
  • 肩甲骨の位置と拘縮:烏口突起を前下方に引く小胸筋、肩甲骨の内転を妨げる肩甲挙筋・僧帽筋、腕神経叢などの癒着で肩甲骨の動きが制限されます。
  • 頸の位置:下位頸椎が前方に引かれると、ストレートネックになり、上位頸椎から下位頸椎の動きが制限されます。
  • 食道の癒着


以上が改善できると、いわゆる円背(胸椎後湾)を改善していくことができます。逆に、どれか一つでも問題が残っていると、胸椎後湾の改善は実質上不可能です。 

 

6.まとめ

頚肩腕症候群と胸郭出口症候群は厄介なものですが、アライメント、原因因子、結果因子を理解することで解決のロードマップを作ることができます。

そのうえで、治療技術を高めて、その通りに治療を作業として進めることが重要となります。ロードマップができないのに治療を始めてもうまくいくはずがありません。

症状の誘発点とそこへのストレスのメカニズムを血管の緊張も含めて見極めることが大切なのです。


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